整備士や大工、工場などで働く人にとって、必須のアイテムといえば作業着です。毎日着用する作業着は、仕事柄油汚れがつきやすいものです。一度作業着についた油汚れは、ガンコに付着し続けるため、汚れがうまく取れずにイライラした人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、作業着にこびりつく「油汚れ」が落とせる洗剤を紹介します。記事内では洗剤を選ぶうえでのポイントから、おすすめの洗剤まで幅広く解説します。作業着用洗剤の選び方や効果的な洗い方をしりたい人は必見です。
作業着の油汚れが一般的な洗剤で落ちない理由
作業着の油汚れは、一般的に流通している洗剤ではなかなか落ちません。これは、洗剤の洗浄力も影響していますが、ほかにも理由があるのをご存じでしょうか。ここでは、作業着の油汚れが一般的な洗剤では落ちない理由を紹介します。
仕事で使用する油は粘性が高く長時間放置されるため
工場などで使用される油は、機械を円滑に動かすことが主目的です。この潤滑油は、食用油と比べて粘性の高さが特徴です。この粘性の高さから、作業着に付着すると繊維の奥までしっかりと染み込むため、油汚れを落としにくくしています。
そして、作業着の油が取りにくい理由は職場環境も大きく関係しています。作業着に油がついても、わざわざ作業を中断してまで油を落としには行きません。結果として、作業着についた油が長時間放置される状況が日常的に発生します。
こうした理由から、作業着についた油汚れは「ガンコな汚れ」となり、一般的な洗剤では落としにくくなるのです。
油汚れは水に馴染みにくい
油は性質上、水に馴染みにくい特徴があります。これが、一般的な洗剤では落ちにくい大きな理由です。家庭で使用される洗剤の多くは、水溶性の汚れを落とす目的で作られています。食べ物の残りカスや日常的に手や衣服につく汚れの多くは水溶性です。
そのため、水溶性の汚れに対応する洗剤が多数販売されています。しかしながら、作業着についた油汚れは水溶性ではなく油溶性です。つまり、油汚れは水溶性ではないため、家庭にある洗剤では落ちにくいのです。
作業着の油汚れを落とすために事前にすべきこと
作業着の油汚れを上手に落とすには、洗濯前の事前処理も重要です。一度固着した油汚れはなかなか落ちません。しかし、事前に適切な処理を行うことで、洗濯の際に簡単に落とせるようになるでしょう。ここでは、作業着の汚れを落とすために事前にすべきことを紹介します。
お湯につけ置きする
洗濯前に作業着をお湯につけ置きすることで、油成分を浮き上がらせ、洗濯時に汚れを落としやすくできます。具体的な方法は以下のとおりです。
1.使用するお湯の温度は40℃〜60℃
つけ置きする温度が低すぎると油が固まり、高温すぎると作業着の繊維にダメージを与えるリスクがあるため、適切な温度設定が必要です。
2.つけ置きする際はバケツや桶を用意する
日本製の洗濯機は50℃程度の湯温までしか耐えられません。そのため、直接洗濯機内で熱湯を使用すると、洗濯機の故障につながるため控えましょう。つけ置きをするときは、汚れたお湯をすぐに交換できるバケツや桶の使用をおすすめします。
3.つけ置きの時間は1〜2時間程度が目安
つけ置き時間は、作業着から油を浮き上がらせるために必要な時間です。つけ置き時間が短すぎると効果が十分に発揮されないため、適切な時間の見極めが重要です。
手洗いする
つけ置きで浮き上がった油汚れをさらに落とすには「手洗い」が有効です。手洗いによって、繊維の奥深くに染み込んだ油汚れも確実に落とせます。ただし、力任せにゴシゴシ擦ると繊維を傷つけてしまう恐れがあるので注意が必要です。
クレンジングオイルを使う
頑固な油汚れは、クレンジングオイルでも落とせます。クレンジングオイルは、メイクを落とすために作られた製品ですが、油分を落とすのにも効果的なアイテムです。使い方の手順としては、まずクレンジングオイルに弱酸性の洗濯用洗剤を混ぜ合わせてペースト状にします。
次に、使わなくなった歯ブラシにペーストをつけて、汚れの部分をトントンと叩いていきます。もしも、クレンジングオイルでも油汚れが残っている場合は、食器用洗剤の使用も有効です。
通常の洗濯物と分けて洗濯する
作業着の油汚れはとても頑固なため、ほかの洗濯物とわけて洗いましょう。作業着に付着した油汚れは、一度衣服の繊維に浸透してしまうと簡単には落ちません。万が一、作業着と一緒に洗ってしまうと、ほかの衣服に油汚れが移り、再洗濯が必要になるでしょう。
したがって、作業着はほかの洗濯物とは一緒に洗わずに、個別での洗濯をおすすめします。
作業着の油汚れとともに落ちにくいニオイの理由と対処法
作業着は油汚れだけでなく、ニオイも厄介な問題です。油汚れと同じく気になるニオイは、洗濯するだけでは簡単には取り除けません。ここでは、作業着の油汚れと同じく落ちにくいニオイの理由と対処法を紹介します。
汚れの付着によって繊維の奥まで洗えていない
作業着のニオイは、汗や皮脂汚れが繊維の奥まで浸透することが原因です。とくに、脇や襟などは汚れが深く染み込みやすいため、ガンコにこびりついてしまう状況に陥ります。その結果、この汚れが細菌繁殖を促し、作業着から不快なニオイが発生します。
それゆえ、洗濯後は外見上きれいに見えても、実際は繊維の奥まで洗浄されていないことが多いのです。
生乾きのまま着用している
雨が多い梅雨時期や湿気が多い季節は、洗濯物が乾くのに時間がかかるものです。しかし、湿った状態で時間が経過すると、細菌の繁殖とともにニオイが発生します。これがいわゆる「生乾き臭」と呼ばれるもので、作業着が完全に乾かないうちの着用で生じます。
雨季や湿度が高い季節では室内での乾燥や除湿機の使用など、作業着がしっかりと乾かせる工夫が大切です。
作業着の油汚れとともにニオイを落とす方法
作業着のニオイを取り除くには、油汚れと同じ方法を使えば除去できます。まず、40℃程度のお湯に作業着をつけ置きし、その後つけ置きした作業着をもみ洗いします。このとき、ニオイの元となる皮脂や汗が多く溜まる脇や袖、襟元などに重点を置いて洗うのがポイントです。
以上の手順を踏めば、作業着からニオイを効果的に除去できます。
作業着のガンコな油汚れを落とせる洗剤は?
作業着に付着する頑固な油汚れには、一般家庭で使用する洗剤ではなく「作業着専用洗剤」の使用がおすすめです。この洗剤は一般的な洗剤とは異なり、油性の汚れに特化した洗浄力を持っています。
しかし、強力な洗浄力がある反面、直接素手で触れると皮膚に刺激を与え、手荒れを引き起こすかもしれません。作業着専用洗剤を使用する際は、ゴム手袋を着用して作業しましょう。
油汚れに強い洗剤を選ぶ
作業着に付着する頑固な油汚れを落とすには「脱油力」の高い洗剤がおすすめです。「脱油力」とは、洗剤が油分を分解し、洗い流せる力を指します。具体的には、非イオン系やアニオン系の界面活性剤を豊富に含んだ洗剤が効果的です。
これらの界面活性剤は、水と油の界面に作用し、油分を水に吸着させることで洗浄力を発揮します。さらに、酵素(プロテアーゼ、リパーゼなど)を含んだ洗剤も油汚れの除去に優れているためおすすめです。これらの酵素は、特定の種類の汚れを分解する働きを持っています。
しかし、酵素配合洗剤の使用には注意が必要です。酵素は強力な分解力を持っており、過度な使用は繊維へのダメージを引き起こすため、使用量の適切な管理が重要です。
ドラム式洗濯機の場合は「低泡性洗剤」を選ぶ
ドラム式洗濯機は基本的に「叩き洗い」と呼ばれる洗浄方法を採用しています。この方法は、洗濯機内部で衣類を叩くことで汚れを落とす方式です。しかし、低泡性洗剤以外で作業着を洗濯すると、大量の泡が生じてしまい衣類が叩かれる力が減少します。
そのため洗浄力が落ちてしまい、油汚れがきれいに落ちない問題が生じます。こうした洗浄力低下を避けるには、洗剤が低泡性かどうかの確認が必要です。
人の脂による汚れであれば「酵素系漂白剤」がおすすめ
作業着に付着する汚れは、機械油だけではなく、人の体から発生する脂もあります。とくに、襟元や袖口などの部分には汗や皮脂が集まりやすく、これらが酸素と反応して酸化し、黄ばみや黒ずみといった頑固な汚れを形成します。
このような皮脂汚れは、油性の汚れと同様、通常の洗剤では簡単には落とせません。こうした皮脂汚れに効果的なアイテムは「酵素系漂白剤」です。液体の漂白剤と重曹を準備し、これを1:1の割合で混ぜ合わせることで、強力な汚れ落としに変化します。
どちらも大さじ一杯程度あれば問題ありません。この漂白剤と重曹の混合液が完成したら、次に40℃のお湯と混ぜ合わせます。そして、この液体を汚れが付着している部分に塗り込みます。塗り込んだ後、しばらく時間を置いてから水ですすげば、汚れがきれいに落ちるはずです。
注意点として、皮脂汚れは長期間放置すると落ちにくくなる傾向があるため、早めの洗濯をおすすめします。
まとめ
本記事では、作業着のガンコな油汚れについて解説しました。作業着が一般的な洗剤で落ちにくい理由から、洗濯前にするべき事前処理法も紹介しました。また、作業着の頑固な油汚れに効果的な洗剤も紹介しています。
「作業着専用洗剤」や「酵素系漂白剤」が油汚れにはとくに効果的です。しかし、このような専用洗剤は、一般的な洗剤よりも洗浄力が高い反面、人間の皮膚にはあまりよい影響を与えません。そのため、専用洗剤を使用するときは、ゴム手袋を装着するなどの配慮が必要です。
現在作業着の油汚れで困っている人は、今回の記事を参考に自分に最適な洗浄方法を見つけてください。